ドラマ【his 恋するつもりなんかなかった】LGBT当事者レビュー
\この記事の信頼性を書いておきます/
自分自身もLGBTQの当事者のトランスジェンダーFTM(女→男)
ドラマや映画が好きで呼吸するにドラマを見る人
映像が大好きでドラマや映画を作りたいと思っている人
his 恋するつもりなんかなかったとは
his の映画版の13年前の渚と迅の出会いを描いている物語です。
全5話の構成となっており、時代も2006年と結構前な感じが出ていて面白いです。特に、ガラケーを使って連絡を取っているところは、すごく時代背景を感じますよね。
監督さんも映画の監督さんと同じなので、じっくりゆっくりと魅せてくれる演出が本当に見ていて心地よいです。
あらすじ
旅館で住み込みで働いている渚と父親の単身赴任先に夏休みの間に遊びにきた迅。迅の別れ話をたまたま聞いてしまうと言う最悪の出会いでしたが、次第に仲良くなる。スエットスーツを脱ぐところで裸をみた時に自分の恋心に気づく渚は、彼女との別れ話に迅を呼ぶ。高校時代の苦い経験があるので、迅は渚に自分の気持ちを伝えないままでいたが…。
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今泉力哉監督について
この物語を撮った監督さんは今泉力哉さんという方で、『リアル』『生っぽさ』が得意な監督さんです。監督さんが意識しているのが『普段言わない言葉の台詞は書かない』だそうで、映画を観終わった時に、『本当に隣にいそう』『近くに住んでいる気がする』そう思うように作品を作っているんです。LGBTQの人たちは、一見近くにいない気がする世の中だけど、実際は左利きの人くらい身近にいるので、監督さんの作風とこの作品のテーマ『 LGBTQ』がうまくマッチしている作品だなと思いました。
監督さんによって、作風が変わるので、この作品のリアリティやフィクションさがないのは、今泉さんのおかげと言えるのではないかと思います。
じっくりゆっくり魅せてくれる演出
映画もそうですが、セリフがすごくあるわけでもないけど、2人の関係性だったり、2人の恋が手に取るようにわかる演出は、監督さんの演出なんだな〜と思いました。
先が気になる演出
僕は、このドラマを一気見してしまいました。先が気になるような展開になっており、一気見したくなると思います。
当事者から見るhis
2006年当時でゲイを見抜いた彼女
この物語は、2006年が舞台です。2006年といえば、3Gの時代でガラケーの時代です。まだLGBTという言葉がほぼないに等しい時代にゲイを見抜くのはすごいなと思いました。
最終話で『私との話し合いにそいつを連れてきて、それってそいつが好きですってことでしょ』と言っていたので、勘が良いんだなと思いました。
スウェットスーツを脱いだ時に恋が発見
スウェットスーツを脱いだ時にドキッとしてしまう渚。その時に迅への恋心へと気づいてしまうんですね。
渚は、結構前から自分がゲイだと気づいていたと4話の最後のカミングアウトで言っているので、自分がゲイと言うことへの戸惑いというよりは、ノンケに恋をしてしまってどうしようと思っているのではないかと推測できます。
この時の渚の目線の演技が少女漫画原作の映画みたいな演技でキュンとくるところです。
迅のカミングアウト
渚って迅くんのことが好きなの?ごめん変なことを聞いた。変なことじゃない、俺にとってはそれが当たり前だから。
ドラマ『his』より
昔から男しか好きになれなかったということを『変なことじゃない』=『ゲイだよ』と言う演出はめちゃくちゃいいなと思いました。そして、変なことじゃないと言うと言うことは、渚は自分がゲイということを自認しているんだということが分かりますね。
この変なことじゃないと言うのは、視聴者にも伝えていることなのかなと思ったりもしています。『ゲイ』と言うことは、変なことじゃないんだよ、大丈夫だよってこのドラマの迅と言う人物を通じて、表現しているんだろうなと思いがら見ていました。
伝えたら壊れちゃう
スーパーでたまたまあった男性とカフェで話をしている時に、自分の好きを伝えなくていいの?と聞かれ迅が言ったセリフが切なすぎでしたね。
伝えたら、壊れちゃうから
ドラマ『his』より
なんとも切ないセリフだな〜と思って聞いていました。
渚役の倉悠貴くんの表情と垢抜けていない感じが本当に渚という人物が生きているかのように感じ、伝えたいけど、関係が壊れちゃうのも嫌だしと言う感情が伝わってくるんですよね。
調べてみると、渚役の倉悠貴くんは、デビューして2本目の作品がhisだったので、初々しい感じが他のイケメン俳優では表せられない演技をしていると思います。作品を重ねるごとに垢抜けていってしまうと思うのでこの時期にしか撮れなかった作品とも言えます。
高校での苦い経験
高校生の時に好きになった男子に告白したら、クラスで噂になってしまい江ノ島の方へ越してきたという苦い経験が迅にあったということを最終話で千歌に話していましたね。
高校生の時の保健体育の授業で思春期になると男は女を女は男を好きになるって言われて、自分はそうじゃないから普通じゃないと思ったと言うセリフは、時代背景を反映しているかもしれないなと思いました。
この話は、2006年なので、そういう書き方になってそうだなと思いました。
多様性と言われている令和の保健体育の教科書には、同性愛の話も書いてあるんじゃないかな〜と思います。
学校と家庭しかない学生時代
学生時代ってコミュニティがあまり広がらないんですよね。学校と家庭しかコミュニティがないのでその両方で『自分は普通じゃない存在』と思ってしまうとどこにも助けを求められないんですよね。
今の時代は、SNSがあるので学校と親が多様性な考え方ではなかったとしても色々なコミュニティに赴くことができるので、行動力さえあれば、迅みたいに『普通じゃない』と閉じこもってしまう可能性は低くなっていると感じます。
最後の告白のシーン
最後の気持ちを伝えて、抱きついて波音で終わると言うのは、すごくいい終わり方だったと思います。青春って感じがすごく出ていて。
初めて会った時から迅のこと気になってた
時間が経つほど渚のことが気になって、もし迷惑じゃなかったら渚のことを好きでいたい
ドラマ『his 恋するつもりじゃなかった』より
高校の時の苦い経験があるから、『もし迷惑じゃなかったら』なのかな〜と思いを馳せました。お互いがお互いのことを思い、好きと伝えている感じがなんともいじらしいというか、ちょっと焦ったい感じがこのドラマ全体で表現されていて、hisの世界観そのものって感じでした。
まとめ
タイのBLドラマとかと比べるとすごく社会派な作品だな〜と思えるほど、硬めな作品です。学校の道徳や保健体育で見せるのには、ちょうどいいかもと思うくらいです。
それがLGBTQの現状でもあるのでもう少し社会が寛容になっていくことを願います。